
米上院銀行委員会、GENIUSステーブルコイン法案を可決

米国上院銀行委員会は、「Guiding and Establishing National Innovation for US Stablecoins(GENIUS)法案」を18対6の賛成多数で可決した。同法案は一部の民主党議員の反対を受けたものの、超党派の支持によって前進した。
米上院銀行委員会、GENIUSステーブルコイン法案を可決
エリザベス・ウォーレン上院議員は、銀行機関にのみステーブルコインの発行を認める修正案を含め、彼女が提案したすべての修正が否決されたことに異議を唱えた。同議員は「この法案が修正されなければ、テロ資金調達を加速させ、イラン、北朝鮮、ロシアによる制裁回避を容易にする」と警告した。
一方、上院銀行委員会の委員長であるティム・スコット上院議員は、この法案を「イノベーションの勝利」と評価した。同氏は、「GENIUS法案は、ステーブルコイン発行者に1対1の準備金維持、マネーロンダリング防止法の遵守、消費者保護を義務付け、同時に米ドルの国際的な地位を強化する」と述べた。今後、同法案は上下両院での採決を経て、最終的にトランプ大統領の承認を得る必要がある。
厳格な準備金要件とAML規制の導入
同法案を2月に提出したビル・ハガティ上院議員は、ウォーレン議員の修正案に反論し、「既に消費者保護、AML(マネーロンダリング防止)、犯罪抑止の規定が含まれている」と強調した。さらに、3月10日には、法案に対し、ステーブルコイン発行者に対する厳格な準備金要件、AML規制、テロ資金調達防止策、リスク管理の透明化、制裁遵守の義務付けといった改正が加えられた。
Web3教育プラットフォーム「Easy A」創設者のドム・クォック氏は、「新たな規制は海外のステーブルコイン発行者にとって厳しい要件となる一方、米国企業には競争上の優位性をもたらすだろう」との見解を示した。
弁護士のジェレミー・ホーガン氏は、この法案が伝統的な金融システムとステーブルコインの統合を予告するものであると指摘。「この法律は、ステーブルコインとデジタルバンキングシステムの融合を意図的に進めている」と3月10日のSNS投稿で述べた。
ホワイトハウスの方針と一致する規制の方向性
さらに、3月7日に開催されたホワイトハウスの暗号資産サミットでは、スコット・ベッセント財務長官が「トランプ政権は米ドルの基軸通貨としての地位を維持するためにステーブルコインを活用する」と明言しており、政府の政策方針とも合致する内容となっている。
GENAIの見解

このニュースは、米国がステーブルコインを本格的に規制しようとしていることを示しており、暗号資産業界にとって大きな転換点となる可能性がある。
ポジティブな点として、GENIUS法案は明確なルールを定めることで、ステーブルコイン市場の透明性を向上させ、機関投資家の参入を促進する可能性がある。
また、米国企業にとって有利な環境を作ることで、国内での技術革新を加速させる狙いも見える。特に、準備金の厳格な要件やAML(マネーロンダリング防止)規制の強化は、ステーブルコイン市場の安定性を高める要素となるだろう。
一方で懸念点もある。エリザベス・ウォーレン議員が指摘するように、法案の内容次第では制裁回避やテロ資金調達のリスクが依然として残る可能性がある。
また、規制が厳しすぎると、米国外のプロジェクトが制約を受け、業界全体の競争力が低下するリスクもある。特に、海外発行のステーブルコインに不利な規制が導入されれば、グローバルな暗号資産市場との摩擦を生むかもしれない。
さらに、トランプ政権が「ステーブルコインを米ドルの基軸通貨維持に活用する」と明言している点も興味深い。これは、米政府が暗号資産を単なる投機市場としてではなく、金融政策の一環として活用しようとしていることを意味する。もしこの流れが加速すれば、中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは異なる形で、民間発行のステーブルコインが金融システムの重要な役割を担う時代が来る可能性もある。
総じて、GENIUS法案は米国の暗号資産業界にとって前向きな一歩ではあるが、今後の議論や具体的な規制内容によって、業界の方向性が大きく左右されることになりそうだ。