PolygonとPyse、ドバイで電動バイクをトークン化──次はインドEV市場に照準

イーサリアムのレイヤー2ソリューションであるPolygon(ポリゴン)と、グリーンインフラスタートアップPyse(パイス)が提携し、ドバイにおける電動バイクのトークン化プロジェクトを始動した。

プロジェクトでは、実車にリアルタイムでデータ収集可能な機器を搭載し、ブロックチェーン上で所有権・利用情報を記録することで、持続可能かつ分散型のEVインフラ構築を目指す。

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車両が“データノード”に変身、収集データはそのままトークン報酬に

このプロジェクトでは、Pyseが開発したDePIN(分散型物理インフラネットワーク)マイニングマシン(DMM)が電動バイクに搭載される。この装置は空気質、道路劣化、騒音などの都市環境データを収集し、それらを即時にオンチェーン化する。

収集されたデータは、信頼性を担保するためパートナーのプロトコルによって検証された上でトークン報酬として配布される仕組みである。これにより、EV車両の収益性(実資産)とデータ活用(投機性)の両面から利回りを得る構造が実現されている。

インド市場が次のターゲット、トークン化で資金調達も可能に

ドバイでの導入が始まった今、次に注目されているのが年間18%成長を続けるインドのEV市場である。Pyseは、まずはラストマイル物流向けの商用EVから展開を開始し、その後ライドシェアや中距離配送にも拡張する計画を明かしている。

Pyseの仕組みにより、EV車両はトークンを通じて分割所有が可能となり、利用状況に応じて収益分配を実現するスマートコントラクトベースのモデルが提供される。これにより、従来の金融機関では資金調達が難しかった運営者にも、ブロックチェーンを介した新たな資金源が提供される。

Polygonは基盤技術を提供、規制順守はPyseが担当

Polygonの支払い・流動性責任者であるAishwary Gupta氏は、「Polygonはインフラであり、トークン化のプラットフォームにすぎない。規制対応はPyse側が担う」と強調する。インドの仮想通貨規制は依然として不透明であるが、Polygonはインフラとしての中立性を保ちつつ、RWA(実世界資産)トークン化の普及を後押ししている

現在、PolygonのChain Development Kit(CDK)を活用したRWA特化型L2チェーンとしては、LumiaやLibreといった事例も登場しており、同社はトークン化領域への積極投資を続けている。

「価値あるデータにだけ報酬」、PyseはデータDAOも構想中

Pyseによれば、DMMで収集された都市データは既に保険会社や車両メーカー、物流事業者に提供されており、ネイティブトークンとの交換が進んでいる。報酬の分配はデータの質や利用状況に応じて動的に変化するという。

長期的には、収集データをDAO(分散型自律組織)形式でガバナンス・収益化・取引できる「データDAO」の構築を目指しており、特にインド都市部のデータは東南アジア全域でも高い価値を持つと見られている。

Gupta氏は次のように語っている。

「PyseによるUAEでのEVトークン化成功は、ブロックチェーンの現実世界への応用可能性を強く示した。インドで規制環境が整えば、このモデルはWeb3インフラの重要な柱となり得る。」

GENAIの見解


GENAI

今回のPolygonとPyseによるEV車両のトークン化およびデータ収益化プロジェクトは、ブロックチェーン技術のリアルユースケースとして非常に画期的かつ重要な事例だと考えます。

まず、これまで多くのRWA(Real World Asset=実世界資産)のトークン化は、不動産や債券といった静的かつ収益の固定された資産が中心でした。ところが今回のPyseのモデルは、電動バイクという可動資産をオンチェーン化し、さらにそこから得られる“環境データ”にも価値を与えている点で、明らかに次のフェーズに進んでいます。つまり、「動的資産+データ収益」という二重のトークンエコノミーが成立しており、これはDePIN(分散型物理インフラ)の真価を体現しています。

また、このプロジェクトが既にUAEで実運用フェーズにあるという点も特筆すべきです。多くのWeb3関連プロジェクトが“構想止まり”となる中、実車両・実データ・実収益という三要素を実現していることは、他のプロジェクトにとっても強いインセンティブと信頼性の証明になるでしょう。

インド市場への展開に関しても、大いに期待が持てます。インドはEV導入率が急速に上昇しつつある一方で、ファイナンスとインフラの分断が課題とされています。

このモデルでは、資産をトークンで分割所有可能にし、クラウド的に“走るEV”に投資できる環境が整います。つまり、資金の少ない個人でもグリーンモビリティの投資家になれるという点で、金融包摂にも貢献する可能性が高いと評価できます。

加えて、データDAOとしての発展性も見逃せません。都市データは、物流・保険・行政・スマートシティ分野において大きな経済的価値を持つため、収集したデータをDAOで民主的に運用・収益化する構想は、未来の「分散型データ資本主義」の実験場としても注目に値します。

総じて、このプロジェクトは「単なるブロックチェーン技術の応用」ではなく、インフラ、金融、環境、データを横断する新たな経済モデルの具現化といえるでしょう。規制整備が進めば、このようなDePIN型モデルが新興国を中心に世界中へ広がる可能性は非常に高いと見ています。

今後のインド展開と、他国への水平展開にも強い期待を寄せています。

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