米中・EU間の報復関税が仮想通貨に追い風か、VanEckアナリストが指摘

米国の投資運用大手VanEck（ヴァンエック）のデジタル資産部門責任者であるマシュー・シーゲル氏は、トランプ大統領による新たな関税政策が、ビットコイン（BTC）を中心とするデジタル資産にとって追い風となる可能性があると指摘した。

ビットコインがエネルギー貿易の決済手段に

シーゲル氏は、SNS「X」上での投稿にて、「中国やロシアは一部のエネルギー取引をビットコインやその他のデジタル資産で決済している」と言及した。さらに、ボリビアも3月に仮想通貨によるエネルギー輸入計画を発表しており、フランスの電力大手EDFも余剰電力を活用したビットコインマイニングを検討しているという。

これらの動きは、仮想通貨が単なる投機資産から、実需を伴う戦略的ツールへと進化していることを示しており、米国の新関税政策はその流れを加速させる要因になると分析している。

SOME THOUGHTS FOR CLIENTS ON TARIFFS IMPACT ON BITCOIN –>

How do the latest tariff announcements impact Bitcoin and digital assets?
The Trump administration’s April 2 tariff package—targeting imports from China and the EU—has reignited global trade tensions and heightened the…

— matthew sigel, recovering CFA (@matthew_sigel) April 4, 2025

「多極化する通貨秩序」の中での役割強化

同氏は、トランプ前大統領の関税措置が、単なる貿易問題にとどまらず、通貨秩序の多極化におけるビットコインの役割拡大を後押しする可能性を指摘した。

特に、米ドル建ての国際決済網から距離を置こうとする国が増えるほど、仮想通貨の利用シナリオが現実味を帯びてくると述べている。

注視すべきはFRB政策とETF資金流入

投資家に対しては、FRBの金利政策の方向性や流動性の変化、ドル指数（DXY）の動きに注目するよう助言している。シーゲル氏によれば、金利の下方修正やドル安が進行すれば、ビットコインをインフレヘッジとする需要が高まるとされる。

また、米国で上場しているビットコイン現物ETFには、年初来で約6億ドルの純流入が確認されており、ボラティリティはあるものの、市場の実需は底堅いと評価している。

関税対抗措置が「非ドル決済」の流れを加速か

最後にシーゲル氏は、「中国やEUが報復的措置としてドルベースの国際決済から距離を取る戦略を取れば、仮想通貨の導入がさらに加速するだろう」と強調している。

新たな地政学的リスクが、ビットコインを中心とするデジタル資産の“戦略的資産”としての価値を引き上げる契機になり得るとの見方である。

すでに中国・ロシア・ボリビアなどがエネルギー取引で仮想通貨を利用している事例があるように、ビットコインは「投機の対象」から「地政学的ヘッジ資産および実用的な決済インフラ」へと確実に進化しています。特にエネルギー貿易という国家間の根幹をなす領域で利用が進めば、これは仮想通貨の“グローバル通貨”としての信頼性を高める決定的な布石になります。

また、こうした動きはビットコインETFやマクロ経済指標（ドル指数や金利動向）とも強くリンクしており、政策的な圧力が高まるほど、ビットコインの価値が政治や国境を超える存在として認識される土壌が整っていくと感じます。

今後、各国がブロックチェーン技術をどう活用し、中央集権的通貨体制から一部シフトしていくかを見極めることが、投資家にとっても重要な視点となるでしょう。特に「デジタル・エネルギー通貨」という文脈でのビットコインの台頭は、これまでとは異なるフェーズに入ったことを示しています。

総じて、今回のような関税政策とそれに伴う「ドル離れ」の兆候は、仮想通貨の本質的価値を再評価させる大きな契機であり、ビットコインの中長期的な可能性を一層強固なものにする要素になると見ています。