ビットコインのハッシュ価格が40ドル割れ、マイナーに採算危機迫る

ビットコインのハッシュ価格（hashprice）が4月初旬に一時40ドルを下回ったことで、マイニング業界に深刻な収益圧力が広がっている。業界分析メディアtheminermag.comのリサーチ責任者であるウルフィー・ジャオ氏によると、これは2023年以来最もタイトな利益率であり、上場企業でさえ損益分岐点すれすれの水準に達しているという。

ジャオ氏の分析では、3月に続いた2回の1.43%の難易度上昇と、4月の6.81%という大幅な追加上昇により、採掘環境は一層厳しさを増している。これに加え、ブロック報酬に占める取引手数料の割合も1.2％未満にまで低下しており、収益性の源が大幅に削がれている。

採掘コストと売却比率の増加、マイナーは生き残りへ戦略転換

同レポートでは、電力コストの高騰と取引手数料の低迷が重なり、上場マイナーの平均的なハッシュコストは1PH/sあたり約34ドルにまで接近していると試算されている。この水準では、40ドルを下回るハッシュ価格は明確に“赤字領域”であり、業界再編の圧力が強まっている。

一方で、BitfarmsとHut 8のように、3月にはそれぞれ16％、80％のハッシュレート向上を実現した例もある。しかしながら、Cleansparkをはじめとする企業が保有BTCを売却し始めており、3月には上場マイナー全体で生産量の42％を市場に流したことが報告されている。これは2023年10月以来の高水準であり、「HODL」戦略からの大転換が起きていることを示す。

トランプ関税案が追い打ち、ASIC供給と設備投資に暗雲

こうした状況下で、トランプ前大統領による輸入関税の再導入案が浮上し、市場の不安は一層深まっている。特に、中国やアジア諸国からのASIC（特定用途向け集積回路）マシンの供給が影響を受ける懸念があり、設備投資の不透明感が増している。

ジャオ氏によると、ビットコイン業界の「price-to-hash」比率は、ポスト選挙期のピークから半減し、50ドル／TH/sまで後退。これにより、業界全体の時価総額も200億ドルを下回る水準に落ち込んでいるという。

業界再編が本格化か、効率化マイナーと中小の淘汰進行へ

結論として、ジャオ氏は「効率の高い大手マイナーによるハッシュレート拡大が続き、そこに関税リスクが重なることで、中小のプライベートマイナーは市場からの撤退を迫られる可能性が高い」と警鐘を鳴らしている。

今後、ハッシュ価格が回復しなければ、マイニング業界はさらに厳しい淘汰局面に突入し、生き残るのはコスト競争力と設備効率を兼ね備えたプレイヤーに限られる可能性がある。

さらに、マイニング難易度の連続的な上昇や、取引手数料の減少も同時に起きていることから、収益性の構造的悪化が進行していると言えます。これにより、多くのマイナーが“フルHODL”から戦略的な売却に方針を切り替えているのは、現実的な対応策でありながらも、資金繰りの厳しさを如実に示しています。

加えて、トランプ前大統領による輸入関税の再導入案が浮上していることも見逃せません。特に、マイニング機器の中心であるASICチップの多くが中国やアジア地域から供給されている現状では、設備更新のコスト上昇と供給リスクが重なり、マイナーにとっては二重苦となります。

一方で、BitfarmsやHut 8のように効率的な運営によってハッシュレートを増やす動きを見せている企業も存在します。こうした企業は今後、業界再編の波を乗り越え、淘汰の中で市場シェアを拡大する可能性が高いと考えられます。

結論として、今後のマイニング業界は「効率性と資本力」が生き残りの鍵になると見ています。ハッシュ価格がこのまま低迷すれば、過剰な設備投資を行った中小マイナーが撤退し、効率的な大手企業による寡占化が進む構造に向かうことは避けられないでしょう。

マイニング業界にとって、今はまさに「耐える局面」であり、戦略的な舵取りが試されるタイミングだと感じております。