
テザーがビットコインマイニングへ本格参戦、マイニングプール「Ocean」にハッシュレートを提供

ステーブルコインUSDTの発行元として知られるTether(テザー)が、ビットコインのマイニングプール「Ocean」に対し、自社の既存および将来的なハッシュレートを提供する方針を発表した。これは、ビットコインの基盤インフラの分散性・透明性・耐久性を支えるという目的によるものである。
「反中央集権」姿勢を強化、Oceanとの連携が象徴的に
テザーのCEOであるパオロ・アルドイーノ氏は、「Oceanへのハッシュレート提供は、私たちのマイニング投資およびビットコインの非中央集権性を守るという使命に沿ったものだ」と述べている。
Oceanは、ビットコインのコア開発者ルーク・ダッシュジュニア氏が主導し、ブロック社CEOでX(旧Twitter)共同創業者のジャック・ドーシー氏が支援していることで知られるマイニングプールである。同プールは過去に、NFTの一種である「Ordinals(オーディナル)」をスパムとみなし、非金融系トランザクションのブロックを行ったことでも議論を呼んだ。
テザーがこのような哲学性の強いプールにハッシュレートを預けるという判断は、単なる事業拡大ではなく、「思想的な選択」であるともいえる。
テザーのビットコイン戦略が加速、USDTとBTCの融合も進行中
テザーは、USDTという世界第3位の時価総額を持つステーブルコインを発行する一方で、ここ数年でビットコイン関連事業に大きく舵を切っている。2024年1月には、USDTをビットコインおよびそのL2ネットワーク「Lightning Network」上で展開する計画を発表した。
また、自社でも定期的にビットコインを購入しており、準備資産の一部として保有する姿勢を強めている。今回のOceanとの連携は、「マイニング」という領域でもテザーがビットコインの経済圏に深く根差していく流れの一環とみられる。
ビットコインネットワークにおいて、ハッシュレートは「マイナーの競争力」そのものであり、より多くの計算力を持つプールは、より多くの報酬を獲得できる可能性が高い。つまりテザーの支援は、Oceanのマイニング報酬の安定性や、ブロック生成能力の強化にもつながる可能性がある。
テザーはビットコインの「単なるユーザー」から「中核インフラ提供者」へ
テザーの今回の動きは、単に資産の一部をBTCに投資している企業という立場を超え、ビットコインエコシステムのインフラ支援者としての新たなポジションを築き始めたことを意味する。しかもその支援先がOceanという「分散性・理念重視型」のプールである点は、今後のビットコインネットワークのガバナンスや文化においても大きな示唆を持つ。
中央集権型の金融システムへの対抗手段としてのビットコインを支持する立場を、テザーが明確に打ち出した今回の発表は、他の企業やプロジェクトにとっても大きなメッセージとなるだろう。今後、USDTとBTCの連携はもちろん、マイニング領域における企業主導の動きがさらに活発化する可能性がある。
GENAIの見解

Tether(テザー)がビットコインマイニングプール「Ocean」へのハッシュレート提供を決定したことは、ビットコインのエコシステム全体におけるテザーの役割が“資金供給者”から“インフラ提供者”へと進化しつつあることを明確に示す重要な一歩だと考えております。
まず、テザーはステーブルコインUSDTを通じて、暗号資産市場における流動性の中核を担ってきた存在です。そのテザーが、Oceanという特定の思想を持つマイニングプールを公然と支援することは、単なる事業的関係を超えた価値観の共有とポリシーへの賛同を意味します。Oceanは、ビットコイン本来の非金融的利用やNFT的要素(Ordinalsなど)に対して否定的な立場を取ってきたことで知られており、テザーがそのような方針に歩調を合わせるというのは、非常に象徴的です。
また、ハッシュレートの提供は単なる経済的投資ではなく、ネットワークの健全性と権力分散への直接的な関与を意味します。特定のマイニングプールに計算力を集中させることは、一見すると中央集権化につながる懸念もありますが、今回のケースではOceanのような「理念重視型・非営利的姿勢の強いプール」への協力であることから、むしろ健全なネットワーク多様性の維持を狙った戦略的支援と見ることができます。
さらに、USDT自体が今後Lightning Networkや他のビットコインレイヤーで展開される計画もあり、テザーのこの動きは単なるPR戦略ではなく、BTC経済圏における自己位置づけの再構築に他なりません。ビットコインを単に保有するのではなく、掘り出し、ネットワークに貢献し、経済活動のハブとして機能するという構図が形成されつつあります。
総じて、今回の発表はテザーが「流通だけを担う存在」から「ビットコインの哲学と技術基盤を支える中核プレイヤー」へと転換を遂げようとしている姿勢を示しており、今後のビットコインの分散性、文化的方向性、そしてマイニングのガバナンスに少なからず影響を及ぼすであろう重要な布石になると見ております。