
SEC、暗号資産市場への規制拡大を再考へ

米証券取引委員会(SEC)は、取引所の定義を拡大する規制案を見直し、暗号資産取引を仲介する事業者を対象外とする可能性を検討している。これについて、SECの代理委員長であるマーク・ウィエダ氏が3月11日に発言した。
当初、この規制案は2020年に策定され、主に米国の国債市場に関与する取引システムを対象としたものであった。しかし、ゲイリー・ゲンスラー前委員長の下で取引所の定義が大幅に拡大され、暗号資産取引に関するプロトコルも対象となる可能性が生じた。その結果、多くの暗号資産関連事業者がSECへの登録を求められる状況となっていた。
ウィエダ氏は、国債市場の規制強化と暗号資産市場の抑制を同一の枠組みで扱うのは「誤りであった」と指摘した。ゲンスラー氏は暗号資産市場に対し厳格な規制を求める立場を取っていたが、その方針は業界内で大きな批判を招いていた。
この規制案は過去5年以上にわたり複数回のパブリックコメントを経ており、現在は最終決定の段階にある。SECのウェブサイトによれば、この規制案には「買い手と売り手を結びつける通信プロトコル」の概念が含まれているが、その定義が不明確であるため、政府証券市場以外の広範な分野にも影響を及ぼす可能性があるという。
SECは最近、暗号資産市場への姿勢を軟化させている。今年1月にはウィエダ氏が主導する新たな暗号資産タスクフォースが発足し、SECコミッショナーのヘスター・ピアース氏が中心となって明確な業界ルールを策定する方針を示している。
今回のSECの方針転換は、暗号資産業界にとって前向きな動きといえる。これまでゲイリー・ゲンスラー前委員長の下でSECは、暗号資産市場に対して厳格な規制を適用しようとする姿勢を取っていたが、そのやり方は業界から強い反発を招いていた。特に、伝統的な金融市場と暗号資産市場を同一の枠組みで規制しようとする方針は、業界の実態と合わないとの批判が多かった。
今回のマーク・ウィエダ代理委員長の発言からは、SECがよりバランスの取れたアプローチを模索し始めたことがうかがえる。暗号資産市場が発展を続ける中で、適切なルールの整備は必要だが、過度な規制がイノベーションを阻害してしまうのは避けるべきだろう。その点で、ウィエダ氏が「暗号資産市場を抑え込もうとする試みは誤りだった」と明言したことは重要だ。
ただし、SECが本当に新しい方針を定めるのか、それとも単なる一時的な発言にとどまるのかは慎重に見極める必要がある。特に、今後の規制案の具体的な内容や、暗号資産業界との対話の進め方によって、SECの本気度が測られることになるだろう。