SEC、Heliumに対する訴訟を取り下げ：ゲンスラー時代の規制方針に終止符

米証券取引委員会（SEC）は、分散型ワイヤレスネットワーク「Helium Network」の開発企業であるNova Labsに対する訴訟を正式に取り下げた。この決定により、同プロジェクトが提供するトークンやブロックチェーンに接続されたホットスポット機器は証券に該当しないとの判断が下された。

SECは1月17日にNova Labsに対して提起していた訴訟において、同社が未登録の証券を提供したと主張し、NestléやSalesforceとの提携に関して投資家を誤解させたと訴えていた。

トークン配布とハードウェア販売は証券ではない

今回の訴訟取り下げに伴い、SECは「ネットワークの成長を目的としたハードウェア販売やトークン配布が直ちに証券に該当するわけではない」との見解を示した。この判断は、同様の分散型物理インフラネットワーク（DePIN）に対する法的な不確実性を大きく払拭する可能性がある。

また、Nova LabsはSECとの和解の一環として、シリーズDの株式ファイナンスに関連した件で20万ドルの”非認否型”（no admit/no deny）和解金を支払うことで合意した。過去の暗号資産関連訴訟と比べて、今回の和解金は非常に控えめな金額となっている。

規制アプローチの転換

この訴訟取り下げは、SECのリーダーシップがゲンスラー前委員長からポール・アトキンス新委員長へと移行するタイミングで行われたものであり、SECの暗号資産に対する姿勢の大きな転換を象徴している。

トランプ政権下で任命されたアトキンス氏の就任により、CoinbaseやBinance、OpenSeaなど、他の主要な暗号資産企業に対する訴訟も相次いで取り下げられている。

また、SECの臨時委員長を務めたマーク・ウイエダ氏とコミッショナーのヘスター・パース氏は、ミームコイン、マイニング、ステーブルコインなどに関しても証券規制の適用除外を明言している。

HeliumのネイティブトークンであるHNTは、このニュース発表後も大きな価格変動は見られず、CoinGeckoのデータによると4月現在で2.76ドル付近で推移している。

SECの姿勢がこのように転換した背景には、政権交代による規制スタンスの変化があります。特にアトキンス新委員長の就任後、規制の厳しさが緩和されつつあり、CoinbaseやOpenSeaなどの大型案件が次々と取り下げられている流れの中で、今回のHelium訴訟の終了もその一環と見るべきです。

実務的にも、トークン設計やネットワーク構築において、法的リスクを回避しながら革新を続けることが可能となり、Web3開発者やプロジェクトにとって大きな追い風となるでしょう。

今後は、DePINやステーキング関連、分散型ストレージといったセクターが一層注目を集め、投資対象としての魅力も増すと予想しています。規制緩和と明確なルール作りが両立すれば、米国発のWeb3プロジェクトはさらにグローバル競争力を高めることになるでしょう。