ドバイ政府、土地登記と不動産トークン化を統合へ──VARAとDLDが新たな協定締結

ドバイ首長国は、不動産セクターにおけるトークン化の実現に向けて大きな一歩を踏み出した。2024年4月6日、ドバイ土地局（DLD）とドバイ仮想資産規制局（VARA）は、不動産資産をブロックチェーン上でトークン化し、それを土地登記システムと連携させる協定を発表した。

不動産資産の「オンチェーン化」を加速

この協定は、ドバイの不動産市場におけるデジタルインフラの整備とグローバル投資家の誘致を目的としており、不動産管理の効率化や市場流動性の向上も期待されている。

協定により、従来の物理的な登記制度に代わって、ブロックチェーンベースの所有権管理が導入される道筋が整いつつある。

トークン化プロジェクトはすでに始動済み

DLDはすでに2024年3月20日より、不動産登記書類のトークン化を試験的に開始しており、これはUAE初の試みである。

今後、この取り組みを拡張することで、2033年までに160億ドル規模の投資を呼び込むことを目指しているという。

「Real Estate 2.0」の青写真

不動産トークン化プラットフォームTokinvestの共同創業者スコット・シール氏は、今回の発表について「これは単なる覚書（MOU）ではなく、不動産の未来を描くプレイブックである」と述べている。DLDとVARAという規制当局が共同で戦略的に動いている点に注目すべきだと語った。

シール氏は「世界中の投資家は、UAEがトークン化で何をしているかを注視すべきである」と呼びかけており、今回の協定がドバイをグローバル不動産投資の“オンチェーン”モデル都市として確立する第一歩になると強調している。

とりわけ、ドバイ政府が土地登記システムという行政インフラの中枢とトークン化を結びつけた点は、他国の先を行く規制と技術の融合事例として注目すべきです。

従来の不動産取引には、所有権の移転、資金決済、登記更新といったプロセスに多くの時間とコストがかかっていました。

しかし、今回のように不動産資産をトークン化し、土地登記とブロックチェーンを直接連携させる仕組みが導入されることで、透明性・即時性・セキュリティの向上が期待できます。

また、このプロジェクトの核心は、単なるテクノロジー導入ではなく、グローバル投資家のアクセス障壁を下げる戦略的意図にあります。

トークン化された不動産は、世界中の投資家が小口で流動的に参加できる資産へと変貌します。これにより、ドバイは今後、「不動産×DeFi」領域の先進都市として確固たる地位を築く可能性が高いと見ています。

また、政府主導で短期間のうちにパイロットから本格導入フェーズに移行した点も極めて印象的です。通常、官民協調の領域では時間がかかるものですが、このスピード感こそがドバイの競争力の源泉であり、Web3時代の都市経営の手本といえるでしょう。

総じて、今回の発表は「不動産×ブロックチェーン」の領域において、規制、技術、実需の三位一体による“Real Estate 2.0”実現への道を示すモデルケースであり、他国の都市・行政にも大きなインスピレーションを与えると確信しています。