イーサリアム苦戦の裏で着々と進む基盤整備、Pectraアップグレードに注目集まる

2025年に入り、イーサリアム（ETH）の価格はビットコイン（BTC）やその他の主要暗号資産と比べて大きく出遅れている。年初には3,300ドルを超えていたETHは、4月4日時点で1,800ドル台まで下落し、およそ45%の下落率を記録した。一方でBTCは10%程度の調整にとどまっており、この差がETH保有者の間で不満を招いている。

Pectraアップグレードがもたらす構造的な改善

専門家の中には依然としてイーサリアムの長期的成長に強気な見方を示す声もある。彼らが注目するのが、2025年4月30日に予定されている「Pectraアップグレード」である。

このアップグレードは、ステーキングの安全性を高め、自動複利機能を導入することで、イーサリアムの経済基盤を強化するものとされている。

ステーキングの安全性と利便性が大幅向上

P2P.orgのCRO（最高収益責任者）アレックス・ロクテフ氏によれば、Pectraによりスラッシングリスクは従来の最大128分の1にまで低下し、これまで参入を見送っていた機関投資家の関心を呼び起こす可能性があるという。

また、現在31%前後にとどまっているステーキング比率は、今後1〜2年で40〜45%に達するとの予測もある。

ネットワーク効率と長期的価値を高める設計

Pectraではバリデーターの最大有効残高（MEB）が32ETHから最大2,048ETHへと引き上げられる。この仕様変更は、特にインフラ管理において大きな効率化をもたらすとされており、分散性に関する懸念を上回る実務的な利点が期待されている。

オートコンパウンディング機能により、報酬の自動再投資が可能になる点も、長期的なステーキング利回りの安定化に寄与する。

価格の低迷とは裏腹に、イーサリアムは今もなお“世界のデジタルインフラ”としての基盤整備を着実に進めている。ロクテフ氏は「短期的な価格変動よりも、レイヤー2の発展や分散型アプリケーション（DApp）基盤としての機能強化こそが将来の成否を決める」と語っており、Pectraアップグレードはその一端を担う重要な局面となる。

価格に反映されるには時間を要するかもしれないが、ETHの本質的価値を高める動きは着実に進行している。

特に注目すべきは、Pectraアップグレードが「投機性」よりも「制度的・技術的成熟」を優先している点です。ステーキングのリスク低減や自動複利機能の導入、バリデーターの運用効率化などは、即効性のある価格上昇をもたらすものではないかもしれませんが、中長期的に見れば、信頼性と参加意欲の向上につながる非常に重要な改善だと思います。

また、ステーキング関連の仕組みが改善されることで、これまで様子を見ていた機関投資家の参加も期待できます。イーサリアムのエコシステムが持つ将来的な拡張性と、分散型アプリケーション（DApp）やレイヤー2の重要な基盤としての役割を考えれば、今回のアップグレードは市場の再評価につながるきっかけになるでしょう。

一方で、市場が注目するのは短期的な価格変動であり、基盤整備の価値が過小評価されがちなことは残念に思います。しかし、長期目線に立つ投資家にとっては、今が静かに仕込む好機でもあると考えています。

イーサリアムが本来持っている技術的優位性と、今後の進化を支える開発の着実さは、依然として非常に強力な投資テーマであると評価しています。