
ブラジル、ビットコイン準備資産の導入を検討 ルラ政権「国家繁栄のカギ」と強調

ブラジル政府、ビットコイン準備資産の必要性を強調
ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領政権の高官が、ブラジルの国家繁栄にとってビットコイン準備資産(Sovereign Bitcoin Reserve)の導入が「決定的に重要」であると強調した。
2025年3月26日、ブラジルのジェラルド・アルキミン副大統領の首席補佐官であるペドロ・ジオコンド・ゲーラ氏は、議会式典で公式に政府を代表して次のように述べた。
「主権的なビットコイン準備資産の設立は、国民の利益に関わる重大な問題であり、我が国の繁栄に不可欠です。ビットコインはインターネット上のデジタルゴールドであり、世界中で富を迅速に移転し、労働の成果を安全かつ効率的に保存する技術を提供します。」
この発言は、ビットコインを国家戦略の一環として採用する国々が増える中で、ブラジルの関心が急速に高まっていることを浮き彫りにした。
ブラジル議会、「ビットコイン準備資産法案」を審議
ゲーラ氏の発言は、ブラジル議会で最近提出された「戦略的主権ビットコイン準備資産(RESBit)法案」を受けたものだ。この法案は、ブラジル政府が国際準備資産の最大5%をビットコインで保有することを義務付ける内容である。
法案によると、ブラジル中央銀行がカストディ(保管)を担当し、ブロックチェーン技術とAIを活用して取引の監視を行う予定だ。
さらに、RESBit法案は以下のような目的を掲げている。
- 国庫資産の多様化
- 通貨変動や地政学的リスクへの備え
- 公共・民間部門へのブロックチェーン技術導入促進
- ブラジル中央銀行デジタル通貨(CBDC)「DREX」の裏付け資産提供
法案が承認されれば、政府は財政責任法に従い、国民経済の安定性を維持しながら段階的にビットコイン準備資産を導入することが求められる。また、透明性を確保するため、半年ごとに議会への報告義務も課される。
ブラジル、仮想通貨の導入率が急上昇
ブラジルの仮想通貨市場は、中南米地域で最も活発な市場の一つとして知られている。
同国は米州で最も早く現物仮想通貨ETFを承認しており、「FOMO11」「DEFI11」「HASH11」など多様な仮想通貨投資商品を提供している。さらに、2024年8月にはソラナ現物ETFも承認され、ブラジル国内の仮想通貨市場の成熟度は急速に高まっている。
Finderの調査によると、2022年時点で約16%のブラジル国民が仮想通貨を保有または利用していると報告されており、RESBit法案はこの国民の高い関心を政府戦略に反映させることを目的としている。
エルサルバドル、ベネズエラ、米国の先行事例を参考
ブラジルの動きは、ビットコインを国家戦略に組み込んだ他国の先行事例にも触発されている。
- エルサルバドル:2021年にビットコインを法定通貨に指定し、国家準備資産としてビットコインを毎日1BTC購入。価格上昇により大幅な利益を得ていると報じられている。
- ベネズエラ:仮想通貨に関する規制枠組みを確立し、一部の国際準備資産をビットコインで保有していると推測されている。
- 米国:2025年3月6日、ドナルド・トランプ大統領が署名した大統領令で、**「アメリカのビットコイン準備資産」**を設立。法執行機関が押収した仮想通貨を国家準備資産として保有し、今後の売却を禁止した。
ブラジルの仮想通貨戦略、世界のデジタル経済リーダーを目指す
RESBit法案の提案者であるエロス・ビオンディーニ議員(PL-MG)は、ビットコイン準備資産の導入によって、ブラジルが「デジタル経済の最前線に立つ」ことが可能になると主張している。
同議員は、「ビットコイン準備資産は、ブラジルの経済的回復力を高め、通貨変動や地政学的リスクへの耐性を強化する」と述べている。
GENAIの見解

ブラジル政府が国際準備資産の最大5%をビットコインで保有することを義務付ける「戦略的主権ビットコイン準備資産(RESBit)法案」を検討していることは、仮想通貨市場にとって画期的な動きです。
ブラジル政府のこの動きには、多くの戦略的意義があります。
- 通貨変動リスクのヘッジ
ブラジルは、新興市場として通貨ボラティリティの影響を受けやすく、自国通貨レアル(BRL)の価値下落リスクが常に存在しています。ビットコインを準備資産として保有することで、国際的な通貨変動や地政学的リスクに対するヘッジ効果が期待できます。 - 資産の多様化とリスク分散
国際準備資産の5%をビットコインで保有することで、ブラジル国庫の資産ポートフォリオを多様化し、リスクを分散できます。従来の外貨準備資産(米ドル、ユーロ、金)に依存するだけでなく、デジタル資産を組み込むことで、長期的な財政安定性を高める狙いがあります。 - CBDC(DREX)の裏付け資産としての活用
ブラジルは2024年に中央銀行デジタル通貨(CBDC)**「DREX」**を発行しましたが、ビットコインをDREXの裏付け資産として活用することで、デジタル通貨の信頼性と安定性をさらに強化することが可能です。
ブラジルは中南米地域で最も仮想通貨導入率の高い国の一つです。2022年のFinderの調査によると、約16%のブラジル国民が仮想通貨を保有または利用しており、仮想通貨に対する国民の関心は非常に高いです。
さらに、ブラジルは米州で最も早く現物仮想通貨ETFを承認し、FOMO11、DEFI11、HASH11など多様な投資商品を提供しています。2024年8月にはソラナ現物ETFも承認され、ブラジルの仮想通貨市場は急速に成熟しています。
このような状況を踏まえると、ビットコイン準備資産の導入は、国内の高い仮想通貨採用率を政府戦略に反映させる自然な流れであり、ブラジルのデジタル経済発展に大きく貢献するでしょう。
一方で、ビットコイン準備資産の導入にはリスクと課題も存在します。
- ボラティリティの影響
ビットコインは依然として価格変動が大きく、短期的な価格変動が国家の財政安定性に影響を与える可能性があります。そのため、分散投資とリスク管理の強化が必要です。 - 規制および国際的な調整
各国の規制環境が変化する中、AML(マネーロンダリング防止)規制やKYC(顧客確認)要件を満たすための厳格な監視体制が求められます。また、国際的な金融機関との調整も必要です。 - 中央銀行と政府の連携
ビットコイン準備資産の管理はブラジル中央銀行と政府の緊密な連携が不可欠であり、透明性の確保と監督体制の強化が求められます。
総じて、ブラジルがビットコイン準備資産の導入を検討していることは、デジタル経済の未来を見据えた戦略的な一手であり、中南米地域だけでなく、世界の仮想通貨市場にも大きな影響を与える可能性があります。
もしRESBit法案が成立すれば、ブラジルはデジタル資産の分野で世界有数のリーダー国となり、他国にも同様の動きが広がる契機となるでしょう。今後のブラジルの法案審議と政府の最終判断に注目していく必要があります。